国内最大級のケミカル・ロジスティック・ターミナルにおける
スピーディーかつ正確な入出荷業務を支え続ける物流管理システム。
東洋合成工業株式会社ロジスティック事業部高浜油槽所様は、国内最大級のケミカル・ロジスティック・ターミナルです。化学品メーカーとして半世紀以上にわたる化学品取扱ノウハウを生かした高度な品質管理体制と、東京湾岸の中心に位置した最適な立地環境に加え、広大な敷地には化学品保税タンク計65基と様々な船舶の受入が可能な3つの桟橋を備えており、月間200隻の船舶と1日200台のローリーにスピーディーに対応した高品質・高機能なロジスティックサービスを提供されています。
これらの業務を支える物流管理システムを2004年からアイテックスが新規開発させていただき、以来約15年に渡ってお客様の業務に寄り添ったシステム改善提案を行ってまいりました。
今回は、2019年に新たにご採用いただいた「入出荷時における各種帳票類の電子化及び自動化」と「IBM i(AS/400)サーバーのクラウド化」についてお話を伺いました。
ケミカル液体の受入・貯蔵・輸送量は国内最大級
-高浜油槽所の業務内容を具体的に教えてください
東洋合成工業は製造業を主体としていますが、この高浜油槽所では化学液体の物流事業を行っています。製造メーカーによる油槽所としては国内唯一の存在ですが、化学品メーカーならではの高度な品質管理体制を強みとしており、ガソリンなどの燃料を除くケミカル品の油槽所としては国内最大の出荷量を誇っています。
直接お客様の輸送船が着桟できる3つの桟橋と65基のタンクを備え、現在約80社のお客様からお預かりした様々なケミカル液体の在庫・品質管理から出荷・輸送管理までを担っています。
具体的な取引量としては、毎月200隻の船舶による入荷と、毎日タンクローリー120台とドラム缶500本の出荷があります。これらの入出荷情報や貯蔵しているケミカル品の品質データを管理するシステムをアイテックスに開発いただき、2005年から運用しています。
背景
出荷作業の省力化とヒューマンエラーの削減を目指す-今回新たに開発した帳票類の電子化・自動化の目的についてお聞かせください
出荷の際には、作業指示書や納品書・受領書と合わせて、出荷物(液体)の中身を証明する分析表も一緒にローリーのドライバーへ渡します。分析表はメーカーごとに個別の指定用紙になっているため、メールやFAXで届いたものを紙媒体で保管していました。
お客様から出荷のオーダーをいただくと、該当する分析表に出荷先や日付など個々に必要な付加情報を手書きで記入した上で、ドライバーに手渡しします。1日の出荷はおよそ200件、帳票数は300枚を超えるため、出荷の事前準備にかなりの手間を要していました。
また、分析表は液体の量や成分などが変わるたびに新しくなるため、その都度帳票の差し替えやロット番号の更新を行わなければならず、作業が煩雑でヒューマンエラーを引き起こす要因ともなっていました。
そこで、これら出荷時にかかる手作業をできるだけなくし、ドライバーへ漏れやミスなく書類を渡せるような仕組みを構築したいと考え、帳票類の電子化・自動化をアイテックスに依頼させていただきました。
導入効果
出荷工数は従来の1/2、ミスは1/7に削減-システム化のポイントと導入効果について教えてください
システム構築にあたっては、可能な限り自動化して出荷にかかる作業工数を減らすことと、自分たちでシステム設定を変更できるような仕様にしていただく点にこだわりました。
まず、これまで紙媒体で保管していた分析表は、OCRなどを使って全てPDFファイルで取り込み、システムで一元管理できるようにしていただきました。取り込んだ分析表はRPA(Robotic Process Automation) ツールを活用してシステムに登録されている入出荷データと自動で紐づき、出荷時には必要な帳票類が一括出力されるようになっています。
また、以前手書きで分析表に記載していた個別の付加情報もシステムで出力できるようになりました。印字項目やレイアウトを自分たちでメンテナンスできるため、新しい分析表が届いても即対応可能になりました。
これらのシステム化により、出荷時にかかる作業工数は以前と比べて1/2にまで削減され、ヒューマンエラーは一気に1/7に減りました。作業コストもおおよそ1/3になるなど、目に見えた効果が出ています。
クラウド化の理由
システムダウンによる出荷停止リスクを回避-自社運用されていたIBM i(AS/400)をクラウド化された理由をお聞かせください
物流管理システムはIBM i(AS/400)のサーバで運用していますが、現行バージョンの保守切れに伴い入れ替えを検討することになりました。当初は従来通りオンプレミスで考えていましたが、アイテックスからクラウド化のご提案をいただき、これまで当社が抱えていた運用リスクを回避して安定した稼働を担保できると思い移行を決定しました。
当社が最も懸念しているのは、ハードウェアの故障によるシステムダウンです。IBM i(AS/400)は元々故障が少ない優れたサーバーですが、それでも数年に1度のペースで不具合が発生することがあります。万が一システムが止まってしまうと、お客様への出荷ができなくなり関東圏内のあらゆる工場をストップさせてしまうことになります。
高浜油槽所は「出荷を止めない」「品質を劣化させない」「誤出荷しない」の3本柱で顧客満足度を向上させているため、システムダウンの際は手作業で出荷対応を行いますが、人力には限界があります。その点クラウドであればメンテナンスが行き届き故障時の復旧も早いため、システムが止まるリスクを最小限に抑えられます。BCP(事業継続計画)対策の観点からも最善の選択だと考えています。
今後の展開
RPAツールなどを活用し更なる自動化を推進-今後の展望について教えてください
出荷時の業務における省力化は順調に効果が出ています。引き続き、一部未対応となっている特殊なお客様の出荷作業についてどこまでシステム化するかを見極めつつ、お客様向けWeb受発注システムの再構築も進めたいと思っています。
定期的に現場へ改善要望アンケートを取りながら少しずつシステム改修を進めていますが、今後は更にRPAツールの活用の場を広げ、可能な限り業務の自動化・省力化を図っていきたいと考えております。
アイテックスには長年にわたり当事業の要となる物流管理システムをお願いしていますが、一番ありがたいのは私たちが「出荷を止められない会社」であることを十分に理解した上で、一緒に考え提案していただける姿勢です。頼りにしていますので、今後も当社の課題に寄り添った最良の提案をお願いします。
東洋合成工業株式会社 会社概要
会社名 | 東洋合成工業株式会社 |
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所在地 | 東京都台東区浅草橋1丁目22番16 号 ヒューリック浅草橋ビル8階 |
設立 | 1954年(昭和29年9月27日) |
資本金 | 1,618,888,703円 |
事業内容 | ・ディスプレイ(液晶並びに有機EL)用、並びに半導体用として各露光波長に対応した(紫外線、KrF、ArF、EUV 各世代)感光材、ポリマー製品 ・半導体・電子材料向け高純度合成溶剤、香料向け化学品、液体化学品の保管管理・物流倉庫業 |